15分文学

15分間で書いたテキストを投稿しています。

よしもとばななの小説についての読書感想文

んなことあるかい、というのが読後の感想。沖縄に来たからといってすべてが救いの方向を示すというのは、いささか過剰なように思う。それはわたしが長らく沖縄に住んでいたからであって、自身に小説のような経験がなかったから共感できない、ということが感想の根底にある。

しかしながら、それは別として、よしもとばななの描写は素晴らしい。特に、心象を文章にすることに関しては抜群だと思う。共感できる一節がたくさんある。読後真っ先に浮かぶのは、『ちんぬくじゅうしぃ』内、父に「そんなふうに祈ったことがあるか」と聞いてほしかった母と、その質問の答えを一人で話し始める悲しさ。本を貸してくれたSは、『なんくるない』の「時は満ちた」という表現に対してそのように話していた。

共感できないストーリーにも共感できる心象の描写があるということは、単純に興味深い。それは、同じ経験をしていない人同士がわかり合えるということにも近いように思う。わたしは、小説で見せるよしもとばななの行動、経験に対して共感することはない。けれど、彼女の喜び、悲しみ、そのような心象に対しては、どこまでも共感することができる。そのことを喜ばしく思う。

現実の人間関係においてもそうであればいい。

---

テーマ「よしもとばななの小説についての読書感想文」

2016.7