15分文学

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給料日

25日まであと2日!それはつまり、あと2回寝て2回起きたら、ついにわたしにも人生初の給料日が訪れるということ。

古い映画館やカラオケパブ、よくわからない事務所なんかがひしめく5階建ての雑居ビル、その1階の隅っこで、わたしは1ヶ月間、部活にも行かずにせっせとアイスクリームをすくってきた。定番はミルク、チョコ、ストロベリー、抹茶の4種類。あとは日替わりでコーヒーとかラムレーズンとかレアチーズケーキとか、まあいろいろ。カシャカシャと音を立ててアイスをすくう銀の器具の名称は、未だに覚えてなんかいない。というより、そもそも知らない。聞いてない。バイト歴1年のアリサさんだって、カシャカシャを何というのか知らないと思う。

アリサさんはやる気がないし、ファンデは白すぎるし、口を開けば社会人の彼氏の話しかしないような人だ。そもそも社会人と付き合うって、わたしにはちょっと信じられない。半月前にサキの紹介で会った野崎先輩だって、大学2年になったばかりって言ってたけれど、それでもわたしには大人すぎる。付き合うって何?デートしたりセックスしたり二人の将来について話をしたり、そんなの怖いし面倒くさい。そんなことよりわたしが考えたいのは、人生で初めて自分の力で得たお金で何を手に入れようっていうことだけ。

リサは香水をつけるようになった。たぶん、ドルガバのライトブルー。ちぃはプラダのポーチ。しかも黒じゃなくてベビーピンクの。サキは、ピアス穴を開けた。たぶんピアッサーを買ったのだと思う。

みんなどんどんオシャレになっていくし、それは正直、ちょっと羨ましい。でもわたしはそんなものは買わない。わたしは自転車を買う。ママチャリなんかじゃない、6段変速ギアがついたエメラルドグリーンのロードバイク。それに乗ったら、どこか遠くに行こうと思う。漠然と、なんか世界が変わるんじゃないかって思ってる。わたしにはこれからたくさんの「初めて」が待っていて、そしてそれは、きっとすごくキラキラしてるんじゃないかって思ってる。

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テーマ「給料日」

2017.4.24