15分文学

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神道

頭の中には竹藪が広がっていて、その中心のぽっかりと空いたところに、小さな神社が建っている。神社というよりはお社そのものだ。杉か檜と思われる白木の木造で、自分の背丈よりほんの少し高い程度の小さなお社なのだった。お社の前には砂利が敷かれた参道が延び、鳥居は朱塗りの細いものが一つだけ建っている。

その空間に、たびたび訪れる。考え事をしているときや夢の中で、あるいはつまらない人とつまらない話をしている最中などに。一度、飼っている犬を連れて行ったこともある。白い犬は、竹藪の緑と鳥居の朱によく馴染み、まるでお社を護る狛犬を彷彿とさせた。竹は風が吹けば一斉にしなり、横からも上からも下からもざわざわと音がする。鳥や虫の声を聞いたことはない。生きているものは、誰もいない。

お社には木の格子がかかっていて、その奥は真っ暗で何も見えない。きっと、何か美しいものが祀られているのだと思う。

わたしは八百万の神に護られている。やがてわたしも八百万の神になる。

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テーマ「神道

2017.4.29