15分文学

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2017-04-01から1ヶ月間の記事一覧

神道

頭の中には竹藪が広がっていて、その中心のぽっかりと空いたところに、小さな神社が建っている。神社というよりはお社そのものだ。杉か檜と思われる白木の木造で、自分の背丈よりほんの少し高い程度の小さなお社なのだった。お社の前には砂利が敷かれた参道…

フェリー

人生で3度、船旅をしたことがある。1度目は舞鶴から小樽へ、2度目は那覇から名古屋へ、3度目は大阪から那覇へ。 どの船旅も、例外なく貧乏だった。3度目の懐具合はとくに酷く、乗船日程が2泊3日あるにも関わらず、船内の自動販売機でカップラーメンの1つも買…

勉強

夜、自分の部屋で無為に過ごすとき、勉強してこなかったツケが回ってきたのだと感じることがある。 学生時代から勉強が嫌いだった。できるできないというよりは、無駄だと思っていた。エピソードとして印象深いのは、高校2年の初夏に行われた数学の期末テス…

携帯

携帯電話を持たない主義思想に憧れつつもiPhoneユーザーになって早4年。わたしの世代は高校生あたりで皆PHSやらガラケー(もちろん当時はそういった言い方はしなかったが)を持つようになったが、例に漏れずわたしもその流れに乗ったため、iPhone以前にも10年…

給料日

25日まであと2日!それはつまり、あと2回寝て2回起きたら、ついにわたしにも人生初の給料日が訪れるということ。 古い映画館やカラオケパブ、よくわからない事務所なんかがひしめく5階建ての雑居ビル、その1階の隅っこで、わたしは1ヶ月間、部活にも行かずに…

ピアノ

家からそう遠くないところに、一軒の古い喫茶店がある。その喫茶店から、夜になるとピアノの音が聞こえてくることに気がついたのは、つい数日前のことだった。そして今日も。エリック・サティのジムノペディ第1番。あまりにも有名なその曲を、わたしも何度か…

よしもとばななの小説についての読書感想文

んなことあるかい、というのが読後の感想。沖縄に来たからといってすべてが救いの方向を示すというのは、いささか過剰なように思う。それはわたしが長らく沖縄に住んでいたからであって、自身に小説のような経験がなかったから共感できない、ということが感…

ある空間についてのテキスト

ストーブの熱を感じる。それは灯油を入れるタイプの古いストーブで、その傍で、わたしは体育座りで寄り添うように暖をとっている。こっち来なよ、とは言われない。わたしの斜め後ろにいるあの男からは。視線すら感じない。ただ、ストーブの上に置かれたやか…

食事についてのテキスト

その食堂には、メニューというものがなかった。木板の床に直置きされた黒板には、「和食」「洋食」とだけ書かれてある。そこへ行くのは初めてのことだったが、その大雑把なもてなしには親近感を覚えた。 「じゃあ和食で」と、わたしはつぶやくように伝えた。…

拒否

思えば、たくさんのことを受け入れ続けてきた。桜が舞えばその美しさを讃え、人の手料理をおいしそうに頬張り、本を読んでは涙を流した。そして今、テーブルに出されたクリームシチューを白飯を前にして、気付いてしまう。いったい、そのどこまでが本心だっ…